1998年度講座
講座概要
(a)物理学基礎講座
「量子力学への招待」・・・量子力学(1),(2)
今まさに終わりを迎えようとしている20世紀は「物理学の世紀」でした。世紀初頭、量子論と相対論という現代物理学の根幹をなす二大学問が生まれ、この100年で成熟した科学に成長しました。これらの分野を切り開いた「天才」達の多くは20代の若者でした。さあ、量子論の扉をたたいてみませんか。彼らの鼓動が聞こえるに違いありません。
あなた方の切り開く21世紀の科学はどんな姿をしているのでしょう。
(b)現代物理学の最先端
1. 「相対論・量子論と宇宙の物理」・・・宇宙(1)
相対論と量子論は今世紀に立てられた現代物理学の2つの柱です。宇宙に存在する物質や天体あるいは宇宙そのものの研究も、この2つの理論によって大きく質を変え発展してきました。星が光り輝くエネルギーの源や元素の起原を明らかにし、また燃料の尽きた星の運命について奇妙な理論的予言を与えました。中性子星やブラックホールです。このような相対論・量子論との関わりを軸に天体の物理や宇宙論について基礎的な話をします。
2. 「高エネルギー天体物理学」 ・・・宇宙(2)
X線による宇宙観測の方法と、観測結果からどのように天体物理学の研究を進めているのかを説明します。X線で宇宙を見るためには、科学衛星によって観測装置を地球大気の外へ運び出す必要がありますが、今ではほとんどすべての星や銀河がX線で輝くことがわってきました。「あすか」衛星が観測した超新星、ブラックホール天体、活動銀河、銀河団などの結果を紹介しながら、天体物理学の研究の現状を、わかりやすく紹介します。
3. 「クォークの色と香り−極微の世界の物質構造−」・・・クォーク
19世紀末に放射能という形で物質の極微の世界に人類がはじめて触れて以来百年になります。この間、新しい元素(原子核)が次々と発見され、同時にその原子核を構成している陽子・中性子自体の構造も明らかになってきました。ここに登場する「クォーク」と、それを結びつける「のり粒子(グルーオン)」の不思議な世界を紹介します。
4. 「結晶の中は小さな競技場―超伝導電子やイオン磁石たちの世界―」・・固体内電子
1cm3中に約1モル(6.02×1023個)の原子がぎっしりと詰めこまれている固体結晶の中で動き回っている電子は、ほかの電子からの静電気力や隣の原子核からの力、電子の軌道運動が作る磁気的な力なども受けています。固体が導体や絶縁体になったり、また超伝導のような不思議な性質を見せるのは、電子が様々な力を同時に受けて複雑な行動を示すからです。具体的な現象について勉強してみましょう。