2003年度講座 [8月4日(月),5日(火)]
テキスト及び概要
エントロピーのはなし(エントロピーとはなにか) (PDF 364KB)
エントロピーは「熱」,「乱雑さ」,「情報」に関係した量である.「形あるものはかならず壊 れる」,「覆水盆にかえらず」,などの慣用句はエントロピーが常に増大し続けるという法則,つま
り熱力学第2法則を身近なことばで表現したものである.この第2法則は非常に「あたりまえ」なこ とを表して,いわば種もしかけもなさそうなのだが,物理学の他の基本法則(古典力学,量子力学,
相対論,超弦理論,などなど)から導くことはできない.仮に究極の基本物理法則が発見されたとし ても,第2法則は多分その枠の外に取り残されるであろう.この非常に身近であるにもかかわらず,
同時につかみどころがなく,よく考えるほどわからなくなる不思議さをもった第2法則とエントロピ ーについて考えてみよう.
ボーズ・アインシュタイン凝縮 --- 目で見る極微な力学の世界 (PDF 3603KB)
物質は、原子分子あるいはそれ以下の原子核・素粒子の極微なレベルでは、波と粒子という異な る性質を同時にもつ不思議な振る舞いをはじめます。この振る舞いを記述する力学は量子力学とよば
れ、現代物理学の重要な基礎となっています。1925年にアインシュタインは、原子の気体が極低温ではボース・アインシュタイン凝縮と呼ばれる状態になり、そこでは気体全体が量子力学的な振る舞い
をはじめることを予言しました。1995年、原子気体は実際にボース・アインシュタイン凝縮を起こす ことが実験により確かめられ、それは予想以上に興味深い量子力学的性質を持つことがわかり、2001年のノーベル物理学賞の対象となりました。私たちは、極微な世界の力学を大きなスケールで観測で
き、またコントロールできるようになったのです。この講義では、ボース・アインシュタイン凝縮と その性質について紹介し、現代物理学の一つの入門となることをめざします。
素粒子物理学とニュートリノ(素粒子の標準理論・ニュートリノの物理学) (PDF 1948KB)
昨年の小柴先生のノーベル賞受賞に見られるように、日本の素粒子実験物理学は近年大活躍をしています。この講義では、素粒子とは何かという話から始めてニュートリノの性質や過去現在未来のニュートリノ実験について簡単に説明し、さらには宇宙とのかかわりについても少し触れたいと思っています。