2005年度講座

研究室訪問

「超伝導とは何か」・・・青木 勇二 准教授
「超伝導」は、非常に不思議な物質の状態で、抵抗がゼロとなること、磁場を排除することなどの特徴を持っています。この現象は、物質に含まれる非常に多数の電子が、量子力学の言葉を使って表現できる特徴的な振る舞いをしているものとして理解できます。ミクロな世界を支配する量子力学の効果が、私たちの目に見える世界に顔を出しているわけです。超伝導の最初の発見は、絶対零度に近い極低温にまで冷やされた水銀においてなされました。その後の精力的な研究により、超伝導にも様々な種類があることがわかってきました。超伝導に転移する温度は、最高のものでは絶対温度で約130度にも達します。この様々な超伝導体で発現している超伝導状態は、どこがどのように違うのか、なぜこの違いが生まれるのか、転移温度は何が決めているのか。これらの疑問を解決するために行われている研究の最前線の一端を紹介いたします。

 

「X線で見る宇宙」 と 「重元素の起源」・・・石田 学 助教授
人類は有史以来、宇宙を無限の過去から無限の未来へ続く悠久不変の存在と考えてきた。このような描像は1962年にX線天文学が誕生することによって一変した。X線は絶対温度1000万Kから10億Kの天体を観測するのに適しており、ブラックホールや銀河団などの巨大な重力源が引き起こす激しい高エネルギー粒子の運動を浮き彫りにしてくれる。X線天文学が解き明かす激しく変動する宇宙の姿を紹介する。
我々の生命や生活は多くの重元素によって支えられている。体を形作る炭素、水を形成する水素、酸素などである。しかし宇宙が誕生した直後には、宇宙には殆んど水素とヘリウムしか存在しなかったことが知られている。我々の生活に必要な炭素からウラニウムに至るまでの重元素は、夜空に輝く色々な恒星が、その進化の過程で生成したものである。講義では重元素生成についての最新の研究成果を紹介する。

 

「ナノの世界の磁石」・・・多々良 源 准教授
ナノメートル(=100万分の1ミリ)程度の小さな世界では日常とは違う現象がたくさん起きています。これはナノの世界を支配している物理法則が日常の世界の法則(ニュートン方程式など)とは異なっているからです。この法則は普段目にする古典力学に対応して量子力学とよばれます。
今回は特にナノの世界の磁石のもつ不思議な性質をいくつか紹介します。もし日常の大きさの磁石で起きたらとても驚くような性質もあります。そうした現象の一部は、次世代メモリやコンピュータに応用が可能です。コンピュータのハードディスクは小さな(といっても現在はまだ1000ナノメートル程度と「大きい」ですが)磁石の集まりですが、この磁石の大きさは高密度化により毎年ナノサイズにどんどん近づいていっています。もしかすると10年後のコンピュータはそうしたナノ磁石のふるまいを利用したものになっているかもしれません。