2006年度講座
「超新星!そして中性子星、ブラックホール-量子論と相対論が教えてくれた特異な星の存在-」
・・・政井 邦昭 准教授
私たちの宇宙はビッグバンに始まり膨張を続け、その中で様々なスケールの構造が形成され、現在の銀河や星などの天体が(勿論、それらを構成する原子や
分子も)つくられたと考えられている。このような、宇宙や天体の起源を理解するのに大きな役割を果たしたのが、およそ100年前に登場した量子論と相対
論である。この2つの理論が果たした役割を考えながら、中性子星、ブラックホールと呼ばれる特異な天体について紹介する。
話は、太陽に代表される、「ふつうの星が光り輝くエネルギー源は何か?」という疑問から始まる。すると、星の輝きは永遠でなく寿命があることが分かる
(いや実際、そうでないとしたら、こんなことを考えている我々の存在も怪しくなってしまうので困る!)。やがて星は、最期を飾る大爆発 !? −超新星−によってその一生を終える・・・・・と思われた。しかし、幕は降りなかった!
ここからが、現代物理学が解き明かした、中性子星やブラックホールが活躍する舞台の始まりだ。コンパクトで重力がとてつもなく強い天体、重力だけじゃない、とてつもなく強い磁場をもった天体(その名もずばり、マグネターと呼ばれる!)があるかも知れない。そんな特異な星が宇宙に存在できるなんて、いったい、物理学者はどのようにして予言したのだろうか?“お話”を聞いて、ただの物知りになってもつまらない。「量子論と相対論を手に入れた自分がいるとしたら...」と、一緒に考えてみよう
「現代情報社会を支える最先端物理 - ナノの世界の磁石 -」
・・・多々良 源 准教授
現代の情報化社会を支える重要な道具の一つが、小さな磁石の向きとして情報を記録する磁気記録素子で構成された「ハードディスク装置」であり、最新のコンピュータや携帯音楽プレーヤーなどに使われている。最先端のものでは、磁気記録素子サイズを1ミクロン(=1/1000ミリ)以下と非常に小さくして集積したため、何千曲もの音楽を持ち歩くことも可能になった。こうした素子には、これまでの物理学研究により明らかにされた、「微細な磁石を制御するノウハウ」が用いられている。しかし社会ではさらに多くの映像や音楽などを、「保存したい」、「持ち歩きたい」という要求があり、これに応えるためにさらに小さなナノ(=1/1000ミクロン)の世界の磁石の利用が必要になっている。ナノの世界に入ると磁石も不確定性という性質を示し、大きな磁石とは異なり、量子力学によって記述される特異な振る舞いを示す。
現代物理学ではそうしたナノの世界の現象を記述することが1つの重要なテーマである。講演では、ナノの世界の磁石(原子レベルではスピンとも呼ばれる)とどのように振る舞うか、それが将来の高性能磁気記録にどのように利用できるか、などを紹介する。