2007年度講座


「 X線で探るブラックホールとダークマター」
・・・大橋 隆哉 教授


ブラックホールとダークマターは、どちらも光を出しませんが、X線というエネルギーの高い光を使うと調べることができます。まず、光さえも脱出できない強い重力をもつブラックホールを、どうすれば見ることができるのでしょうか。実は、ブラックホールを巡るガスは強いX線を出していて、X線のエネルギーをつかって空間のゆがみを測ることで、ブラックホールそのものの性質も調べることができます。多くの銀河の中心で、宇宙初期に巨大なブラックホールが作られたことがわかっています。こうしたブラックホールの進化と銀河の進化について、最近の観測をもとに考えてみたいと思います。

一方、ダークマターというのは重力には感じる、つまり質量はあるけれど、あらゆる光に対して透明であるという奇妙な物質で、私たちの知っている素粒子とは異なった種類の物質と考えられています。宇宙全体のダークマターは、光やX線を出す通常の物質に比べて5倍も重いため、宇宙の進化の様子はダークマターに支配されています。多くの銀河が集まった銀河団には大量のダークマターと高温ガスが広く分布していて、X線で高温ガスを観測するとダークマターの分布を知ることができます。X線観測をもとにダークマターについて何がわかってきたのかを調べ、最後にダークエネルギーをどうやって探るのかも考えてみましょう。




「超伝導とは何か -物質中の電子の奇妙な振る舞い -
・・・青木 勇二 准教授

 電子は、私たちの生活に最も密接に関わっている身近な素粒子です。一個の電子が、非常に小さな質量、マイナスの電荷、自転(スピン)にもとづく磁石としての性質を持つことが明らかになったのは、何十年も前のことですが、人類による電子の研究がこれで終わったわけではありませんでした。物質中を舞台として、沢山の電子が集まれば、一個の電子の性質からは想像もできない多種多様な奇妙な性質が現れることが明らかになってきたからです。

その中でも特に際立った現象が「超伝導」です。電気が摩擦ゼロで流れ、近づく磁石をはね返します。これは、物質中の多数の電子が、量子力学の言葉を使って表される特殊な状態に変身した結果であると考えられています。つまり、ミクロな世界を支配する量子力学が、私たちの世界に顔を出しているわけです。最近の精力的な研究により、超伝導現象にも様々なタイプがあることがわかってきました。この違いは何か?なぜ違いが生まれるのか?果たして室温で超伝導になる物質は世の中に存在しうるのか?これらの疑問を解決するために行われている研究の最前線を紹介いたします。



体験実験や研究室訪問