2008年度講座
「ビッグバン〜宇宙の成り立ちと進化」
・・・政井邦昭 教授
私たちの身近にはさまざまな元素がある.例えば空気中の窒素や酸素,私たちの体を作っているカルシウムや鉄.当たり前のようにそこにあって,物質を構成しているこれらの元素は,地球あるいは宇宙に初めから存在した?そうでないとすれば,いつ,どのようにして作られたものだろう.また,私たちが現在見ている光り輝く星や銀河といった天体は,宇宙に初めから存在したのだろうか.
いろいろな観測結果から,私たちの宇宙はビッグバンと呼ばれる大爆発から始まって,今も膨張を続けていると考えられている.講義では,どうやってそのような考えに至ったのか?という話に始まり,その宇宙の歴史の中で起こったと考えられる事件を探っていく.膨張する宇宙を逆にたどれば,宇宙を満たしているエネルギーが全部一点に集中したような極限的に高温の状態があったことになる.そこでは,天体はおろか,現在目にするような元素すら無かったはず.そこから,どのような歴史を経て元素がつくられ,さらには,今私たちが見る宇宙の姿,様々な大きさの構造がつくられていったのか,また,この先,私たちの宇宙はどうなっていくのか.それらを解き明かしてきた,現代物理学・宇宙物理学の世界へ案内したい.
「電気抵抗がゼロになる? ー超伝導の不思議な世界ー」
・・・堀田貴嗣 准教授
電圧=抵抗×電流というオームの法則に従って、物質に電流が流れることは皆さんよくご存じだと思います。電気抵抗というのは、電流の流れにくさを表す量ですが、いくつかの元素や物質では、温度を下げていくと、突然電気抵抗がゼロになることがあります。これが超伝導と呼ばれる現象です。容易に想像できるように、超伝導体は電気抵抗がなく発熱の問題もないので、大電流を流すことができ、通常の電磁石よりも強力な磁力を発生させることができます。それを利用した超伝導磁石は、たとえば私たちの体の内部情報を画像化する断層核磁気共鳴画像法 (MRI) で実用化されています。また、リニアモーターカーにおける磁気浮上システムにも、超伝導磁石が利用されています。
超伝導研究の究極の目標といえるのが、室温超伝導の実現です。超伝導が起こる温度を転移温度と言いますが、現在のところ、銅酸化物高温超伝導体で160ケルビン程度、摂氏にするとマイナス110℃くらいです。従来の超伝導体で転移温度はせいぜい数十ケルビンでしたから、それに比べると高温なのですが、普通の感覚からすると、まだまだ低温です。もし、この転移温度を室温、あるいは冷蔵庫で冷やせる程度まで引き上げることができれば、さまざまな便利な材料が作り出せるでしょうし、人類のエネルギー問題の解決にも貢献できるかもしれません。超伝導の研究は、必ずどこかで室温超伝導の夢につながっていて、それは、私たちの未来に大いに役立つことが期待されているのです。
体験実験
研究室訪問
お茶会(大学生や大学院生に質問、討論)