2011年度講座

日程:平成23年8月21日(日) 10:30〜19:00
たくさんの方々のご参加をいただきありがとうございました。

講演概要

今年は3人の先生が、それぞれの研究分野について45分ずつお話ししました。
質疑応答では、「私たちは今、どんな時代に発見された物理を学んでいるのか」が、
ポイントとなっているのかもしれないことが見えてきました。

「X線で宇宙を見る」 江副 祐一郎先生

夜空を見上げると星がまたたいて見えますね。私たちの目が
星からの可視光(波長 350 nm から 750 nm 程度の電磁波)を捕らえているからです。
では電磁波の波長をもっと長くしてゆくと?赤外線や電波になります。そこでは何が見えるでしょうか?
またもっと短くしてゆくと?紫外線やX線、γ線になります。
こんな高エネルギーの光を出している天体なんてあるのでしょうか?答えはイエスです。
夜空は様々な天体の様々な波長の光で輝いています。
天文学、宇宙物理学では宇宙の成り立ちや天体の性質を調べるために、
波長の違う光で空を見て、総合的に情報を得ることで、宇宙を知ります。
本講義では、私が専門とするX線天文学を中心に、最新の宇宙観測と将来計画について紹介します。

写真:江副先生の講義

「素粒子物理学への招待」 北澤 敬章先生

ひとくちに物理学と言っても様々な分野がありますが、そのなかでも素粒子物理学は独特の位置を
占めるものです。多くの物理学者は、すでに知られている自然法則(電気や磁気の法則など)の
範囲内で、物質の興味深い性質や宇宙で起きている不思議な天体現象などを理解しようと努力します。
しかし、素粒子物理学者の研究対象は自然法則そのものです。
自然法則は「美しく」あるべきという信念のもとに様々な実験や観測の結果を参照しながら、
その「究極の姿」を追い求めています。素粒子物理学のこれまでの歩みの一部を紹介し、
その魅力を感じていただきたいと思います。

写真:北澤先生の講義
キーワードは「科学者は自然をよく見なければならない」でした。

「超伝導の不思議 〜量子力学のマクロな現れ〜」 東中 隆二先生

超伝導体では、通常の物質では起こらない、常識を超えた現象が観測されます。
この「超伝導」現象は、ミクロな世界を支配する量子力学の効果が、
私たちの目に見えるマクロな世界に顔を出すことによって実現しています。
そのなかで特徴的な性質は、電気抵抗がゼロになること、磁場を完全に排除するマイスナー効果が
挙げられます。これらの性質を応用して磁気浮上状態で走行するリニアモーターカー(JR 式マグレブ)や、
身体の断層写真を撮影できる磁気共鳴画像診断装置(MRI) などが実用化されており、
これ以外にも超伝導ケーブルによる超長距離送電も実用化のめどが立ってきています。

超伝導のもつ特性を利用した他の応用例は、
波動関数の位相に関連した「ジョセフソン効果」と「磁束の量子化」を利用した、
超高感度磁気センサーである超伝導量子干渉素子(SQUID) があります。
従来の磁気センサーの 100 倍の感度があり、脳や筋肉が動くときに出す微小な磁気の変化まで
捉えることができます。まだ実用化は遠いのですが、ジョセフソン効果を利用した超伝導トランジスタは、
スーパーコンピュータや量子コンピュータへの利用が期待されています。
このように超伝導体はエレクトロニクス・エネルギー・輸送・医療といった様々な産業分野にとって、
とてつもないメリットを生むまさに夢のような物質なのです。

写真:東中先生の講義
物質科学における自然現象の多様性が強調され、若くても大発見ができる可能性が強調されました。

体験実験

超伝導を体験しよう

GdBCO という第二種超伝導体を液体窒素で冷却して、磁石に近づけるとどうなるか観察しました。
超伝導は磁場にどのように影響するのかが、ポイントです。
写真:超伝導の実験 写真:超伝導の実験

分光器を作って原子の量子力学の世界を見てみよう

分光器を使って、いろいろな光のスペクトルを観察しました。
原子への放電による光と、白熱灯の光とでは、それぞれどんな模様が見えたのでしょうか。
そして、どうしてそのような違いが現れるのでしょうか。

写真:分光器の実験 写真:分光器の実験
左:大学院生による説明 右:一人ひとりが自分で作った分光器で観察しています

燐灰ウラン鉱石の蛍光を観察しよう

ウラン化合物に、紫外線を当ててみるとどうなるのでしょうか。紫外線の波長も変えて、試してみました。
写真:燐灰ウランの実験
鉱石は7月に山口県で採集してきたものです。地元の人でもいつでも手に入るものではないそうです。

世界最強の磁石(ネオジウム磁石)を体験

ネオジウム磁石を金属の円筒の中に落とすと、どうなるのでしょうか。
写真:磁石の実験
荒川先生による手作りの装置を使った解説

大学生や大学院生との懇親会

学生・院生が、大学でどんな勉強や研究をしているかや、大学で扱う物理の分野を紹介したり、
「高校生のうちにどんな事をすればいいのか」などのご質問にお答えしたりと、
2時間くらいにわたって様々なお話をしました。


参加者の感想(抜粋)


来年度も多くの積極的な参加を待っています。


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